広島市では、大規模な新興住宅の建設で若い世代が増えたこと、保育園の保護者たちのなかにも保育だけでなく、教育を要求する親たちが増えたことなどを受けて、小学校就学前の子どもに対する教育・保育及び保護者に対する子育て支援の総合的な提供を推進するための「認定子ども園」が制度化されました。
そのひとつ、「光明学園」を訪問しました。ここは、元々は定員370人という大規模な保育園でしたが、現在は幼稚園を新設し50人が新たに入園しました。3ヶ月くらいの乳児から小学校入学前の幼児までが年齢別のクラスに分かれて、いろいろな活動をしています。
ホールでは、年長学年にあたる5、6才児の子どもたちが、太鼓と踊りを披露してくれました。幼稚園児も保育園児も同じクラスで活動していることに、問題はまったくないそうです。食事は自園で調理しています。アレルギーの子どもたちにも対応しています。おじゃましたときは、ちょうど補食の時間で、5、6歳児用の手作りのカステラを一緒にいただきました。「光明学園」は特別養護老人ホームも同じ建物の中にあり、デイサービスやグループホームの高齢者の方々との交流もあるそうです。また、地域の人たちとの交流も活発で、習字やそろばん、ソフトボールなどを課外活動として教わったりもしているそうです。
江戸川区では、「おひさま保育園」が、教育的要素を取り入れた保育をしています。家庭環境に左右されて、子どもの通う場が違ってくることで格差がうまれるようではいけないと思います。幼児教育がすべてではありませんが、望んでいるのに選択肢もないという状況を作ることだけは避けなければならないと考えています。
岡山市では、まず、市役所で福祉関係の窓口を一本化するシステムを開発した話を伺いました。このシステムの導入によって、たとえば障害福祉のサービスを受けている市民が、同時に高齢者福祉のサービスを受けようとするときに、今までは各部署で重複して手続をしなければならなかったものが、1カ所の窓口で迅速に手続きができるようになったそうです。この方式が、江戸川区でもできるようになると便利だと思います。
その後、「岡山ふれあいセンター」という総合施設を見学させてもらいました。これは、岡山市を6つの福祉区に分割し各福祉区の核になるセンターのひとつで、福祉関係施設、保健課関係施設、生涯学習関係施設、ホールや研修室など多種にわたる施設が同じ建物の中にまとまっているものです。
福祉関係施設には地域包括支援センター、介護相談支援センターなど高齢者の生活を支えるための相談やサービスなどの業務を行っているところがあり、知的障がい者のための通所更正、通所授産などの施設や身体障がい者デイサービス、障がい者のためのワークプラザなども運営されていました。保健関係施設には、トレーニングのできるアスレチックコーナー、子どもたちのためのプレイルーム、生涯学習関係施設には児童館や生きがい作りのための講座が開催できる工芸室のような施設も整備されていました。そのほか、子どもも大人も障がいのある方も利用できる入浴施設や音楽を聴いてリラックスできるコーナーや、1階のオープンスペースでは小さい子どもたちが遊んでいる横のソファーでお年寄りが歓談しているなど、思い思いの方法でみんなくつろいでいました。
このような大型施設は、江戸川区の16倍の面積をもつ岡山市ならではのことにも思えますが、大型施設である必要はないけれども、小さい子どもから高齢者までいろいろな世代の人たちが同じ施設を利用して一緒に過ごせる空間があることは大切なことだと考えています。
今回の視察では、広島でも岡山でも小さい子どもからお年寄りまで、障がいのある方もない方もみんなが思い思いに過ごせる場をつくることの実践例を見せてもらえました。これから、江戸川区でどのようにこれを生かせるか考えていきたいと思っています。