江戸川区スーパー堤防裁判報告会  裁判所は誰の味方なのか…

報告会の資料

3月6日「スーパー堤防裁判報告会」に参加しました。縁あって、私はこの裁判をずっと傍聴していました。

昨年10月、第3次訴訟「江戸川区スーパー堤防差止等請求訴訟」が最高裁で上告が棄却され約10年にわたって続けられた「江戸川区スーパー堤防裁判」が終了しました。

この訴訟を傍聴して感じたことは「司法は、まったく住民の方を向いていない」ということです。区画整理事業では強制収容が可能になりますが、スーパー堤防事業にはその法的根拠はありません。国と行政に忖度した裁判所は最後までその疑問に答えることはありませんでした。

そもそも国が決めたからといって個人の所有地の使用に制限を加えることになる「スーパー堤防事業」自体がおかしいと、事業の差し止めを求めた第3次訴訟では、控訴審で、この堤防地域の土地に住宅を建てることへの危険性があることを訴えるために、国に提出を求めた地盤データの測定地点が、主要な部分は黒塗りであったことから、住民は裁判所に「文書提出命令の申立て」を行いました。この命令が、裁判所から国交省に出されて、初めて国は膨大な地盤データを提出したのです。これをもとに、地盤の強度が不足していた原因について、住民側は地質学の専門家の協力を得て分析し、国は堤防としての強度のみを考え、宅地としての整備をしなければならないという視点がなかったことが明らかになりました。

残念ながら、最高裁への上告が棄却され、裁判は終了しましたが、この訴訟が行われたことで、裁判という公の場で、スーパー堤防の問題点「本当に必要で有効なものなのか」「普通に行われる区画整理事業より住民への犠牲を強いるものになる」「スーパー堤防事業に住民を立ち退かせる法的根拠はない」などが明らかにされました。

ある住民の方は、自分の住んでいる家の土地を堤防にしてよいと言ったことはない、国から聞かれたこともないとおっしゃいます。区画整理と一体のスーパー堤防事業と明言して事業を始めながら、裁判において、区は、区画整理事業とスーパー堤防事業とは別のものだと主張し、裁判所も区画整理事業の目的に合理性があるかどうかのみで判断しました。当事者である住民が納得できる説明は1度もありませんでした。

住宅は、移転後すぐに壊されてしまった

住民の安全のためには、何百年かかろうとどんなに費用がかさもうと、スーパー堤防事業をすすめるという姿勢は、素人の私には到底理解できません。川幅の広い下流でスーパー堤防を造るよりも、頻繁に氾濫する上流地域の整備の方が喫緊の課題です。財政上の理由もあり、スーパー堤防事業でまちづくりをする手法をとっているのでしょうが、住民への負担はたいへん大きくそこに住み続けたいという住民に犠牲を強いてまで行うべきものなのでしょうか?スーパー堤防に固執することなく、もっと時間もコストもかからない工法をと訴える住民の方々の声は理にかなっているとずっと思っています。