オリンピックと福島第一原発の放射能の拡大 ~原子力緊急事態宣言は継続している!~

小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所員)の講演をお聴きしました。2011年に福島第一原子力発電所の事故があった年の夏、東京・生活者ネットワークが小出先生をお招きして講演会を開催したことがあります。小出さんのわかりやすい理路整然としたお話をもう1度、江戸川区文化センターで聞くチャンスに恵まれました。

安倍首相は、2013年アルゼンチンで福島の状況を「アンダーコントロール(制御下)」にあると言い切ってオリンピック・パラリンピックを誘致しました。しかし、実際は放射能の数値は高いまま溶け落ちたデブリがどういう状況にあるのかわからないのが実情でした。

原子力緊急事態宣言が、今でも継続していることをご存知でしたか?福島第一原発の状況は決して「アンダーコントロール」ではないのです。汚染水を貯める場所にも限界があります。地下水に入り込む放射能の影響を、凍土壁などを構築してシャットダウンしようという計画もありましたが、所詮無理な計画でした。薄めて海に流そうという計画が持ち上がっています。海の生きものはどうなるのでしょう?途方もない時間を必要とする半減期、水と分離できないトリチウムの存在…素人だからこそ、判断するためには、情報が必要なのです。そういう情報はなるべく目に付かないように、オリンピック・パラリンピックの情報は大量に!情報の出し方は「アンダーコントロール」です。

「復興五輪」「コンパクトな環境によいオリンピック」ということばだけがひとり歩きしている…このことばを信じている方はどれだけいるのでしょう!?オリンピック競技を観て元気をもらえることは否定しませんが、福島の置かれている現実、マラソンの会場が札幌に移り、当初の「コンパクト」もことばだけのものであることは明らかです。誘致した以上、成功させるのは国としての義務でしょうが、そのために費やされる自治体を含む関係機関の苦労は、私たちの税金の上に成り立っていることを改めて考えさせられました。開催後の日本経済が、中小企業を含めて、本当に私たちに恩恵があるものなのかは今後検証していかなければなりません。オリンピック・パラリンピックを話題にすることで現実から目を背けてしまってはならないと、小出さんのお話を聞いて改めて思いました。