教科書採択に関しては、特に社会科の教科書で、家永三郎氏の「教科書検定は、教科書執筆者たちを縛りつけるもので、教育の国家統制だ」と検定を違憲だとした教科書裁判をはじめ、政治的にも争点になったものがありました。「新しい歴史教科書をつくる会」は、これまでの歴史教科書が必要以上に「自虐的」な記述になっているという主張のもと、2001年、2005年に歴史と公民の教科書を出版しました。「つくる会」の教科書は、日本建国の神話や日本近現代史に多くのページが費やされ、日本の植民地支配や侵略戦争を正当化するなど「歴史観に偏りがある」と、国内の教育、歴史、法曹界などの専門家をはじめとして海外からも批判され、マスコミでも随分この問題が取り上げられました。「新しい歴史教科書をつくる会」に関わっている人たちの内部抗争で2つに分かれ、今回の教科書検定には、扶桑社から歴史と公民の教科書、自由社から歴史の教科書が出版されるなど、ほとんど内容のかわらない教科書が、2社から出版されるという事態になりました。
自分たちの思想信条だけで争い、裁判さえ絡んでくるような教科書を選択することは許されないことだと考えます。子どもたちのための教科書であることを忘れてはならないのです。
委員の方たちは、校長先生や保護者など区民も入って検討された「教科書選定委員会」の提言や「新指導要領」も参考にしながら、1教科ずつ採択を進めていきました。生徒にとってわかりやすいか、身近に感じられる教材を用いているか、図や資料の使い方はどうか、自分で主体的に取り組むことができるかなど多角的な観点から意見が述べられました。2年後の新指導要領の全面実施を考えてでしょうが、今回、採択された教科書は、今まで使われていたものと変更はありません。2年後の、教科書採択が、どうなるか注視していかなければならないと思っています。
採択された教科書は次のとおりです。
国語:教育出版 書写:光村図書 英語:三省堂
地理:帝国書院 歴史:東京書籍 公民:東京書籍 地図:帝国書院
数学:東京書籍 理科Ⅰ分野:東京書籍 理科Ⅱ分野:東京書籍
音楽一般:教育出版 音楽器楽合奏:教育芸術社 美術:日本文教出版
保健体育:学研教育みらい 技術科:東京書籍 家庭科:東京書籍