スーパー堤防は有効か? 第4回定例本会議報告③
最後は、7月に直接施行が行われた北小岩1丁目東部地区を例にスーパー堤防しかないと主張する江戸川区の姿勢を質しました。質問は以下の通りです。
質問
最後に、スーパー堤防について伺います。
北小岩1丁目東部地区では、7月に直接施行を行って以来、反対の方々も生活再建との葛藤の中で移転され、あと1軒を残すところとなりました。①事業の大幅な遅延は早くからわかっていながら、11月末、ようやく住民説明会を行いましたが、これほどまでに工期が遅れてしまった理由と、現状に照らし、施行者として反省し、改善すべき点は何か、改めて伺います。
こうした中、年内にも国がスーパー堤防事業に着手しようとしています。現在進行中の事業計画変更は、盛り土の事業主体を区から国に変更することが重要な変更ポイントです。これが認可・決定される前に、国が盛り土することはできない、との質問に対し、区は、「これまでの造成計画にある盛り土の範囲や形状が特に変わるわけではない。新たな変更が生じないので、事業を止めずに行う」(部長)と答弁しています。しかし、施行者が区から国に変わることがまさに「新たな変更」であり、この施行者の変更は、重要な変更だからこそ、土地区画整理法に基き、事業計画変更案が改めて公告縦覧され、認可手続きがとられているのです。②答弁の訂正を求めると同時に、現状において国が盛り土できる理由、根拠を改めて伺います。
区は、次に篠崎地区において、道路事業・緑地事業・土地区画整理事業と3つの都市計画事業と一体のスーパー堤防事業をすすめようとしています。計画範囲にある、平安時代から1300年続く浅間神社は、2008年特別緑地保全地区に指定され、スーパー堤防予定地から除外されました。しかし、周辺が盛り土されることによって、神社の形状は様変わりし、その景観を損ねることが懸念されます。735年の歴史を誇る妙勝寺は、本堂と480基のお墓が、盛り土と平地が混在する場所に移動させられようとしています。いずれも区内のみならず、東京屈指の寺社仏閣であり、江戸川区民が後世に引き継ぐべき歴史的財産であることは言を俟ちません。
住民が平穏に日々の生活を営み、歴史が根付くこうした地区に、仮にも耐越水対策が必要だとしても、もはやそれがスーパー堤防でなければならないということではないはずです。
なぜ、スーパー堤防か、ということについては、依然として、昭和63年の河川審議会の答申に遡りますが、自然災害の状況もこの間変化を見せています。四半世紀前に導入されたスーパー堤防という超過洪水対策が、現状、施行範囲を首都圏・大阪圏の5つの河川の下流域120kmに縮小してさえ、整備中のところも含めて、わずか16.4㎞、14%しか進捗していないのはなぜなのか、その現実こそを受け止め、将来の対応を考えるべきです。
私たちはこれまでも、住民を立ち退かせる必要もなく、費用も抑えられる、鋼矢板やソイルセメント壁などを使用するTRD(連続地中壁)工法など、別の工法をとるよう国に求めるべきという提案もしてきました。これに対し、区はこの間、「土堤原則」を根拠に、また、日本土木学会の学説を引用し、「スーパー堤防事業しかない」との答弁に終始してきました。しかし同じ土木学会は「盛土である堤防は一端越水が生じると破堤に至りやすいという性質を本来的に有する」ことも認めています。東日本大震災では液状化や法面すべりなども起き、水だけではなく、地震に弱いことも露呈しました。今や「土堤原則からの脱却」を説く専門家もいます。また、区が引用する、土木学会が2008年に発表した「耐越水堤防整備の技術的な実現性の見解」においても、スーパー堤防に関し、「対象とする堤防を、ある程度緩傾斜化した場合の耐越水効果を定量的に把握できる手法は現在のところ確立されていない」という報告があります。この見解から私たちは、なぜ越水・浸透しても壊れないと区は断言できるのか、という疑問を持たざるを得ません。さらには、「大幅な用地確保の必要が生じるため、大河川の堤防強化の手法としては社会的あるいは経済的観点からも現実的な越水対策とはなり得ない」とも指摘しているのです。こうした重要な事実は、会計検査院も同様に指摘しており、これら課題が解消されたとの説明は未だにありません。
③この指摘を区はどのように受け止めているのでしょうか。また、こうした専門家の意見に基き、他の工法の検討を国に求めるべきと考えますが、いかがでしょうか。
地域住民の生活権や財産権を侵すばかりか、歴史や景観をも脅かす本事業は、土木学会や会計検査院だけでなく、国土交通省とも密接な関係にあり、技術面において専門的に調査する公益財団法人「リバーフロント研究所」、また公共事業改革を目指す市民団体などからも、たびたび事業の不完全性を指摘され、その持続可能性には依然疑問が投げかけられています。
区は、ゼロメートル地帯であることを実施の根拠としていますが、同じ低地帯の東部近隣の区には積極的なスーパー堤防事業の意思はなく、よって、下流域に限ってもスーパー堤防はつながる見込みはありません。つながってこその堤防効果が、もたらされないことは明らかなのです。
18班地区でのスーパー堤防の必要性を説明した際の江戸川区が言う「洪水時の避難場所になる」との説も、「増水時には川に近づかないで」という現実の防災情報とは相反するものであり、④行政自らが誤った情報を喧伝していることを認め、訂正すべきです。答弁を求めます。
区長 ①基本的に時間がかかったことは残念。民主党政権の仕分けの問題で3年半とまってしまった。安全とより良い住みやすいまちづくりのために、みなさんのご意向を受けてやっている。北小岩も篠崎も、みなさんのご意向を受けて始めましょうということになっている。そういう意味では、残念ではあるが反省するという類のものではない。私たちも自信をもって自らの責務を果たすというつもりでやってきている。そのことを待ち望んでいる人たちも大勢いた。決して後ろめたい気持ちでやっているということではない。
③学説的にいろいろなことをおっしゃったが、治水事業なので、どういうふうにしたらよいか学問的にいろいろ意見があるのは当然。土木学会がどうしたこうしたというより、治水について責任をもつ国が、国交省が長年にわたる日本国土における治水の問題を考えながら、いろんな学説を考慮して、それを取り入れながら、その経験則も踏まえて国家として、土木学会としてではない国家として、この方法がいいでしょうと決めたこと。私たち自治体はそれを是としていくことは当然。
高井部長 ②盛り土について、事業計画変更は、土地区画整理事業の事業計画であって、スーパー堤防事業の事業計画ではない。事業計画変更に先だって、昨年5月に国と江戸川区で共同事業にして、土地区画整理事業は江戸川区が、河川の方のスーパー堤防化の盛り土については国が行うと定めているわけで、それに基づいて国交省の方が事業を進めていくというわけで、何ら問題はないと考えている。
④避難場所について、避難という考え方は、危機管理室の方で増水時には川に近づかないでということだが、川というのは特に江戸川区の河川は複断面構成になっており、雨が降らない日常については河川敷という高水敷で、人々がレクレーションに使ったりしているが増水時にはそこが水に浸かるので川に近づいて溺れられると困るので、「近づかないように」ということ。スーパー堤防事業で、いろいろ高台ができてくるが、水害についてはケースバイケースで、内水氾濫で地域があふれる場合もあれば、どこかの堤防が決壊してどこからか流れてくるということもある。そのなかで適切に避難誘導の方法を考えながら進めていくのは当然。スーパー堤防を造ってあの地域は万全な体制になるということではない。そこについては適宜避難誘導策を設けながら行う。決して欠点があるということではなくて、盛り土をして高台ができることによって、より有効な策ができるということで、ご理解いただきたい。
再質問 スーパー堤防について、今月、篠崎地区で、現地での全体説明会が開催されますが、先ほど述べた特別緑地保全地区を含め、浅間神社周辺の盛り土について、また周辺環境との調和はどう図られるのかお聞かせください?さらに、昨日の答弁にあった篠崎公園の高台化と一体という全体像がわかるような説明はなされるのでしょうか?
高井部長 全貌ということでは、今月説明することは、さまざまな事業がありますよということで。土地区画整理にしてみれば、事業計画決定してこれから具体的にされていくわけで、その都度、適切に地元のみなさまにはお話していく。
篠崎公園の高台化ということは、東京都の方は、将来高台化をしていくという構想で、具体的絵柄がまだない。実際いつからとりかかるかということも決まっていない。基本的には、この篠崎公園の方針については話す方向で考えている。
再々質問 篠崎のスーパー堤防について、最後にお聞きします。区画整理の事業計画を出そうというこの段階で、一体整備されるスーパー堤防事業の内容が決まっていないのでは、話にならないと考えます。その都度話すと仰いました。個別的ではなく、浅間神社の盛り土の具体の内容が適切であるかどうかを住民が理解することが必要です。全体説明会を1度で終わらせず、重要なことをお互いに確認し、意見を交わしながらのまちづくりが重要だと考えますが、いかがですか。
高井部長 篠崎公園地区については、併せてまだこれから土壌調査とかボーリング調査をしながら具体的設計に入っていく準備を進めていく段階。そうっいたもので詳細な状況が出てくるので、全体的に上から見た構想はできあがっているが、具体的にどういう構造にしてどうしていくという細部にわたることはこれから詰めていく。それについてはしっかり事業の過程をおいながら早くお知らせをしてしっかりご理解いただいて事業を進めていくということ。