福島原発事故 検察審査会「起訴相当」議決    原発事故は誰の責任か?

武藤類子さんと

福島第一原発の事故で周辺病院の入院患者らを避難の途中に死亡させたなどとして、東京電力の元役員が業務上過失致死傷の疑いで刑事告発された事件について、東京第五検察審査会が「起訴相当」とする議決をしました。

ちょうど、7月27日福島原発告訴団の「これでも罪を問えないのですか」というテーマで行われた「さようなら原発江戸川連絡会」主催の講演会に参加したところでした。告訴団団長の武藤類子さん、告訴人の方、告訴団弁護士保田行雄さん、3人のお話を伺いました。

武藤さんは、福島第一原子力発電所の事故では12.7京ベクレルのセシウムが放出されたこと、今でも1日5000人以上の人が原発での作業に携わっており、作業員のなかには放射線量が82μSvと高い場所で作業をしている方々もいる。その被ばく状況はまったく公表されない。また、放射能に汚染された焼却可能物質を、減容化施設を作って処分量を少なくしようと20ヵ所に建設予定だが、建設費は総額100億円にもなる。子どもたちの甲状腺がんもすでに50人が甲状腺がんだと確定している。事故前はせいぜい1~2件/年だった。しかし、国は福島県医大にのみ権威を与えほかの医療関係者からの声は聞き入れてもらえない現状など、いまだに、福島の現状は変わっていないと話されました。

告訴人の方は、肌に現れる黒い湿疹の話や吐き気・鼻血など子どもたちの状況や一時立ち入り時の町の様子を報告してくれました。

保田弁護士は原発告訴について、これだけ大きな事故であるにもかかわらず、原発事故の責任をだれもとっていないのはおかしいと、業務上過失致死死傷罪で訴訟を起こしたこと、昨年9月の東京地方検察庁は地震や10mを超える津波の発生を具体的に予測することは不可能だったと不起訴が決定されたために、東京第五検察審査会に審査の申し立てをしたことを説明してくれました。

東京地検の不起訴理由の「10mを大きく超えて建屋に水が入り、電源まで失うような津波がくること」について具体的に予測できるかどうかを問題とし、予測は困難なので回避できた可能性も認められないとしたのですが、そもそも自然災害は不確定なものです。にもかかわらず、細かい点までの予測を要求すること自体、東京地検の決定の理由は市民感覚からかけ離れています。万が一浸水したら、過酷事故になることはわかっていたことであり、必要な対策を講じていれば、このような事故は回避とまではいかなくても軽減できた可能性はあるのです。事故にあった方々の思いに寄り添った一般市民から選ばれた検察審査員で構成されている審査会の議決に東京地検は応えるべきです。