スーパー堤防建設はやはり無理がある ~ 本会議質問 報告① ~
今は、第4回定例本会議の最中です。本会議の質問で、まず、スーパー堤防を取り上げました。
質問)2006年の宅地造成等規制法の改正に伴って、宅地耐震化推進事業により盛り土造成地の分布調査が行われることになりました。この改正は、地震の揺れや大雨で崩れやすい地盤があることから、新潟県中越地震以後、分布図作りと対策工事がなされることになったものです。国が調査を求めた都道府県や政令市、中核市などのうち、まだ着手していない自治体も多い中、東京都は、すでに、3000㎡以上かつ5m以上の深さを対象とした盛り土造成の分布調査を行いましたが、その調査結果は公表されていません。一方で、横浜市や川崎市ではHP上で公開しています。横浜市は、公開の理由を、盛り土造成地が身近にあることを市民に知ってもらうことで災害の未然防止や被害の軽減につながる防災まちづくりに活かしていくため、としています。
東日本大震災では、区内の宅地造成地でも液状化の被害が出たのは周知の事実です。現在、行政訴訟を起こしている北小岩1丁目東部地区の住民は、まさに、盛土の上に住むことへの不安を、提訴の大きな理由のひとつにしています。こうした住民訴訟が行われている一方で、土地区画整理審議会は粛々とすすめられています。この審議会はあくまでも区画整理について審議する場であり、盛り土については取り扱っていないとのことですが、盛り土による斜面が前提でありながら、果たしてそれでいいのでしょうか。
現在、土地区画整理審議会において、換地設計案が示されたところだと聞いていますが、斜面のどこに換地されるかによって安全度も資産価値も異なるのではないでしょうか。少なくとも住民には盛り土の立体図案や模型を示し、丁寧な説明をするべきではないでしょうか。
また、換地設計基準および土地評価基準には、盛土することでの資産価値への影響なども考慮されるべきと考えますが、盛り土と資産価値の関係は、「土地評価基準」の「路線価係数第1項街路係数」にある「道路の勾配」について、「3%以上の勾配には最大1割の削減」が記載されているのみであり、地表面を構成している盛り土の構造はまったく考慮されていません。これについてはどのようにお考えでしょうか。
答弁)区としても土地の評価員をお願いして、最終的には土地評価をして、清算金等々やっていく。評価していかないということではない。ただし、議論の中ではむしろ、盛土をした場合の方が現状より評価が高まるというのが一般的な意見だ。そのことをどう評価されるかわからないが、特段に今そのことを取り上げて換地設計案をつくっているが、どうのこうのということにはならない。最終的には評価をしていくということ。
質問)さらに、国交省のハザードマップポータルサイトで土地条件図を見ると、北小岩1丁目東部地区は東半分が自然堤防、西半分は埋土地という地質の違うものになっています。基礎になる土台部分の土の質が違うことが盛土にどのような影響を与えるのかは、明らかになっていません。このことについて、どのような差異が考えられるのか、差異がある場合、安全な盛り土についての対策はどのようにとられるのでしょうか。以上、まず伺います。
答弁)土地の条件によって上に盛る土の支持力との関係があるので、当然そのことは評価をしながら、盛土の仕方については具体的な案を設計していくということになるのは当然。
質問)盛土して作られるスーパー堤防はサーチャージ工法をとっています。この工法は、将来そこに載せる土の荷重分に、沈下すると予測される分を余分に載せ、圧力をかける方法です。しかし、そうは言っても、基本は土を固めて作る堤防です。水抜きについてはサンドパイルや水抜きパイプなどで対策をとるのでしょうが、2008年の土木学会の「耐越性堤防整備の技術的な実現性の見解」においては、堤防内裏法面に水が浸み込んだ場合、耐越水効果を定量的に評価できる手法は確立されておらず、時間の経過によって地盤沈下が進んだり、一部空洞化が進んだりする可能性は否定できないことが指摘されています。
東日本大震災では、利根川沿川の津宮、須賀地区でスーパー堤防の崩落事故が起きました。震災以前にも北区浮間の荒川沿川のスーパー堤防は大雨で法面が崩れ、道路を塞いでしまいました。こうした事実を知るにつけ、盛土の上に住むことについて、不安が高まることは当然のことと言えます。崩落したスーパー堤防については、盛土の施工方法が現在ほどの水準になっていなかったという答弁が以前ありましたが、よもや手抜き工事をしたわけでもないでしょう。きちんと施工したはずが、何らかの欠陥により崩落してしまった、と考えるのが相当ではないでしょうか。同じことが今後北小岩で起きないとは限りません。
北小岩の盛土は安全だと言い切れるのか。不安を抱えながら施行した上、何か被害が起きた場合にはどうするのか? 区の考えを伺います。
答弁)大原則、被害が起きないようにやるわけで、そんなことを考えない。それを原則とする。丁寧な仕事をしていきたいということ。万が一のときには、司法の原則に則って、その状況に応じてそれなりのことがなされるでしょうから、今とやかく言及しないが、大原則がそういうことがないように仕事をしていくということ。
質問)八ツ場ダム訴訟関係者が国交省関東地方整備局へ情報公開請求して入手した資料の中に、昨年3月、専門の調査機関である公益財団法人リバーフロント研究所(当時)が出した「高規格堤防に関する整備手法検討業務 報告書」があります。第5章「今後の高規格堤防事業の進め方の検討」の中には、「高規格堤防整備事業については、今後まちづくりとの共同事業が行き詰ることは確実である。」と明記されています。「住宅地での住民を移動させて、工事に必要な期間、更地にしておく必要があることが、事業をすすめることを難しくしている」とも書かれ、さらに、今のようなこま切れ状態のスーパー堤防については、「散発的な整備のままでは、大都市において壊滅的被害の防止という、もともと期待されている効果は発揮できないため、このままの状態では事業を復活させることは非常に考えにくい」との検討結果が報告されています。この報告は、今後の堤防強化策を検討するにあたり、重く受け止めるべきものと考えます。
現在、国は、スーパー堤防ではない、ほかの堤防強化策も行っています。裏法尻を強化し、天端を舗装し、保護マット付きの遮水シートを重ねた難破堤堤防、また、土にセメントを混ぜて強化し、地中に連続した壁面を構築する連続地中壁工法もあり、これらは越水を想定した手法として有効な上に、スーパー堤防よりずっと短期間で、費用もさほど高くなく、何より、住民に負担をかけることもありません。
これだけ住民との軋轢を生み、区民と区、双方に大きな負担のかかっているスーパー堤防事業から、別の手法の堤防強化策に切り替えることを国に求めていくことも必要ではないでしょうか?お伺いします。
答弁)リバーフロント研究所の報告書は、公表されていないので中身の確認ができていない。現状の既成市街地においてスーパー堤防をやるということは、多くの方が住んでいる環境で実施していくので、それなりのご負担もかけるし、様々な課題があることは事実。低地帯であって、堤防に守られているので、強化は大命題。課題があると言っても、安全な堤防をつくることを、目標を持ってやり遂げるということでなくてはならないと思う。確信を持って取り組んでいきたい。防災や安全に、ブレた姿勢はまずいので、強い意思を持って取り組んでいきたい。
意見) スーパー堤防の上での換地については、どう考えても平地の換地とは、条件が異なります。全部終わった段階で評価するのではなく、今、土地区画整理審議会が換地設計案を示しているのだから、今この時にこそ、住民説明が必要です。また、リバーフロント研究所は、国がスーパー堤防整備を推進するための調査をしてきた機関です。そこが、住民を移動させてのスーパー堤防事業には無理があると、検討結果を出したことは、たいへん大きな意味をもちます。住民の負担のより少ない、コスト面も時間もスーパー堤防ほどかからない堤防強化策を国に求めていくべきです。