そもそも原子力発電は、核分裂時に出る熱を利用して発生した蒸気でタービンをまわして発電するもので、仕組みとしては湯沸かし器と一緒なのですが、ウランを核分裂させて熱源とすることで核分裂生成物が残ることが決定的な違いです。
たとえば、100万kWの原子力発電所では、1年間に1tのウランを燃やすことで1tの核分裂生成物質を生み出しますが、広島の原爆で燃えたウランの量は800gです。比べると、いかに原子力発電所で使われるウランの量が大きいかわかると話されました。福島第一原子力発電所1〜4号機で1年間に使われていたウランの総量は351tです。これまでにどれだけの核分裂生成物質が生み出されていたのか、見当もつきませんが、3.11の事故で環境にたいへんな悪影響を及ぼしたことは明らかです。
また、3月12日〜14日までのSPEEDI(原子力発電所などで事故が発生した場合、収集したデータおよび通報された放出源情報を基に、風速場、放射性物質の大気中濃度および被ばく線量などの予測計算を行う)による、甲状腺被ばく線量が500mSv(ミリシーベルト)を超えたシミュレーションの結果は秘密にされたとのことです。朝日新聞に「8月27日に、埼玉県で開かれた放射線事故医療研究会で、住民が飛散した放射性ヨウ素を空中や食品から体内に取り込むことによる甲状腺の被曝(ひばく)は、健康被害を予防する安定ヨウ素剤を飲むべきレベルだった可能性があると指摘された」という記事が載っていました。すべてにおいて、情報は後手後手なのです。
小出さんは、自分が原子力のことをよく知っている原子力を扱う学者だからこそ、放射線管理区域に入るときは、それなりに覚悟をして入る、その基準が福島に適用されたことに非常に怒りを感じるとおっしゃっていました。そこで生活しているひとたち、特に影響を受けやすい子どもたちが外で遊んでいる現実があるのです。
原子力の平和利用なんてありえない、原子力を扱う技術に「平和利用」「軍事利用」などない、あるのは「平時利用」と「戦時利用」であり、「平和利用」を標榜してその技術を持ってしまえば、いつでも軍事に利用できるのだということを改めて思い知らされました。
原子力のような危険なものを選び、人々が生活する場を放射能で汚染させてしまった私たち大人はどう生きていくべきなのか、大きな問いを投げかけられた講演でした。
「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」代表の中手聖一さんは、医者は講演で福島は安全だと言い、マスコミも記者が書いた原稿が、不安をあおるとボツにされるようななかで、現状は放射線管理区域(放射線の不必要な被ばくを防ぐため、放射線量が一定以上ある場所を明確にし不必要な立ち入りを防止するために設けられる区域)と同様もしくはそれ以上の影響があると懸念される場で生活しなければならない県民の実情を訴えられました。
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