スーパー堤防の必要性の真偽

江戸川左岸で破堤した水が北小岩に越水する!?

区は、スーパー堤防事業に関しては、住民合意が大前提だと以前から説明しています。江戸川区が最重要施策のひとつとしているこの事業において、私たちは以前から、住民の方々と区長が直接話をする場を設けるべきだと提案してきました。ようやく、9月4日、担当責任者の1人である部長が、住民主催の対話集会に出席し、住民との直接対話が実現しました。
この集会で、部長から北小岩地区の危険性について「市川市上流、流山市付近の江戸川左岸で破堤した水が、下総台地にぶつかり、その勢いで対岸にあたる北小岩側に越水するので、北小岩での対策としてスーパー堤防が必要だ」という説明がありました。集会における責任者としての発言について、改めて、確認するために決算委員会で質問しました。
 答弁では「上流から流れてくる水が、市川側の堤防と国府台に挟まれた漏斗状のところに入り込むので勢いがついた水が高い国府台に跳ね返って北小岩側に越水する」というのです。
 この説は、江戸川河川事務所による浸水想定区域図にある破堤点ごとのシミュレーションとは、まったく異なります。流山市付近江戸川左岸の破堤では、時間の経過ごとのシミュレーションによると、下流の江戸川区の方ではなく上流側に流れることになっています。たとえ、松戸市などもっと江戸川区の近くで起こったとしても同様で、江戸川区側下流には全く水は流れてきません。これは、下総台地の裾野が地盤の高い地形であることが理由です。河川事務所という公的機関が出しているものと、部長の説明とには食い違いがあり、これでは聞いた誰もが納得できるものではありません。
また、江戸川区の「スーパー堤防整備方針」の浸水想定図の説明には「荒川上流域で破堤すると区内のおおむね全域、江戸川上流で破堤すると新中川より東側全域が、浸水被害を被ると予測がされている」とあります。このことについては、「荒川、江戸川各々の浸水想定図を新中川を境に足し合わせた図面」となっており、一度の災害時における被害ではなく、荒川・江戸川両河川の左岸・右岸、上流・下流域のあちこちで破堤した場合をすべて合わせたものです。「200年に1回の確立で」と整備方針には書いてありますが、この図のように全体が浸水する事態が起こることはほとんどないことを指摘し、「整備方針」の説明には整合性がないことも指摘しました。
どちらの指摘に対しても、的確な答弁はなく納得できるものではありませんでした。区が住民に対して、スーパー堤防の必要性とする根拠になるデータと、河川事務所が出している資料とは大きな相違があり、住民との合意形成におけるひとつの大きなハードルになっています。住民合意を求めるなら、こうした点をきちんと整理し、区は住民と一緒に検証していく姿勢こそが必要なのだと強く要望しました。