機能を果たさなかった「児童虐待SOS」

区立小学校1年生が、1月23日に「ご飯を食べるのが遅い」などという理由で、継父に殴られて亡くなった虐待事件は、この間の報道でさまざま取り上げられているところです。私の所属する文教委員会では2月5日、子育て・教育力特別委員会では2月10日に、執行部からの説明と質疑応答がありました。また、福祉健康委員会においても、同様に行われました。
文教委員会と福祉健康委員会では、それぞれの所管が違うこともあり、報告の内容が違ったり、新聞報道がされてから、都立墨東病院に入院したことなどが新たな事実として伝えられました。こうしたことから、行政の縦割りや連携のあり方の問題点が明らかになりました。また、これらの委員会に所属している委員である議員には委員会で報告があっても、所属していない委員には直接の報告はいまだにされていません。議会事務局もしくは議長を通して全員に報告するなどのあり方を検討すべきです。議会も関係機関と同じように、このような問題が2度と起こらないよう対策を考えるべき役割を持つので、全議員が情報を共有するべきだと考えます。

今回のこの事件は、区が「児童虐待SOS」で各機関の連携を謳っていたにもかかわらず、それがまったく機能しなかったということに原因があります。教育委員会は、9月に歯医者さんが子ども家庭支援センターに虐待の疑いがあると通報したことを今回の事件が起きるまで知りませんでした。児童虐待のケースを扱う「子どもの保護に関する地域協議会」の調整機関は、確かに子ども家庭支援センターということになっていますが、今回のように、学校に通っている児童・生徒が被害者だった場合の連携はどうすることになっていたのでしょう?区が2008年に出している「明るい未来を 子どもたちに 〜江戸川区児童虐待防止ガイド〜」には、小中学校の役割として、早期発見の場になりうることから、発見した場合は全校体制を確立し指導体制をとるとあります。また、緊急時には児童相談所もしくは児童虐待SOSに相談することになっています。学校は虐待に関しての専門機関ではありません。虐待が疑われた時点で、専門機関に任せるべきだと考えます。今回学校は、親の対応がきちんとしていたとか、忘れ物もなかったから大丈夫と判断していましたが、これは大人の目線であって、子どもの立場に立っていたとはいえません。

虐待はたいへん難しい問題を含んでいます。学校と家庭、専門機関を結ぶ役目をしているスクールソーシャルワーカーという、自ら動いて各機関の連携をとる専門の配置をしている自治体も出てきました。専門家ばかりがいてもと消極的だった江戸川区も、この事件をきっかけにソーシャルワーカーの導入を検討する必要があると教育長が見解を述べていました。2度とこのようなことが起きないように、どこが責任をもって虐待に対応すべきなのか、専門家を含めて新たな仕組みづくりの検討が急がれます。