1日目は基調講演「ただの生きものの大切さ」と3人のパネリストによる「生きものの多様性と郷土力」についての意見交換でした。
「ただの生きものの大切さ」は総合地球環境学研究所副所長の秋道智彌さんによるもので、ただの生きものとは、魚を例にとってみると、アユや鮭・など食用になるものや観賞用の魚など人間にとって有用なものでもなく、ブラックバスやブルーギルなどのような有害なものでもない、メダカやムギツクなどのあまり関心の対象にならない生きものです。以前は日本全国どこにでもいたメダカが今では稀少な存在となってしまったように、特に有用でもなく有害でもない生きものは、議論の対象にもなることなく、人間の経済活動や環境改変の犠牲になってしまうのだそうです。ただの生きものへのまなざしが環境をまもるという観点からも重要なのだというお話でした。
3人のパネリストによる意見交換は岐阜経済大学の森誠一先生と写真家の白籏史朗さん、秋田県大潟村の黒瀬喜多村長がそれぞれの立場から自然に対する思いを話されました。
森誠一先生「生きものの様々な形・生活、それを育む様々な環境、それらと人との関係が大切。自然を畏怖する心を忘れずに自然のざわめきを感じる感性があって初めて、その地域固有の多様な生きものが日常生活のなかで意識される。それが環境をまもることにつながるのだ」
白籏さん「山や森林などの自然があってこそ人間も動物も生きられる。遊佐町であれば、鳥海山からの湧水がなければ米ができないというような、地域ごとの自然との関係性を意識することが保全につながる」
黒瀬村長「大潟村は大規模農業のために、八郎潟を干拓して作られた村で、自分たちがモデルになるという意識の農家が多い住民自治の村。周りの八郎湖が飲料と農業用の水源なので環境への意識が高く廃食用油の回収・石けん作りなども行なわれている。住民主導で『環境創造型農業宣言』がなされ、現在、村内で環境保全型の農業に取り組んでいる」
先日の天笠先生の講演でも、経済効率を追い求めた結果、自分たちの住んでいる地域だけでなく、途上国の環境をも悪化させているという話がありましたが、この日伺った方々の話は、どれも、自然界のなかで人間だけが離れて存在することはあり得ない、自然を悪化させている人間も生き物のうちであり、自分たちがすべての物事につながっていることを、しっかりと認識しなければならないというメッセージでした。