この会議で、日本はたいへんなブーイングを受けたそうです。森林面積の急速な減少が懸念され(CO2の吸収量が減る、動植物の生息地も減ってしまうなどの影響があります)、補償をルール化しようとしたところ、日本だけが反対したのです。採択は、全会一致が原則であるために、結局この補償については見送られることになってしまいました。次回2010年のこの会議は名古屋で開かれる予定ですが、Anywhere but Nagoya. Japan is hostile host.(名古屋以外ならどこでも。日本はひどい開催国だ。)と書かれたチラシが配られ、抗議の対象になってしまったそうです。この会議に参加していないアメリカと、傍聴していた多国籍企業の代弁を日本がした結果でした。
今、石油も穀物も異常な値上がりをしています。これは需要と供給の関係で価格が決まっているのではなく、1バレル当り1ドル上がると300億ドルが動くといわれるオイルマネーの投資先としての石油価格の高騰なのです。そこで、アメリカが2005年に「脱石油」として打ち出してきた新エネルギー戦略がバイオ燃料ブームの火付け役になりました。小麦・大豆・とうもろこしが相次いで市場最高値を更新しました。
バイオ燃料の原料は、畑で作るので再生可能なエネルギーであるなど、環境にもよいと考えられています。けれどもバイオ燃料は本当に環境対策になるのでしょうか?ブラジルでは大豆畑とトウモロコシ畑を作るために、熱帯雨林の伐採がすすみ、インドネシアとマレーシアではパームヤシの大規模プランテーションで収穫のために、農薬を散布して枯らすことで丈を調整するので、農薬汚染の問題も起きています。連作による土地の疲弊や地下水の枯渇、害虫の異常発生などもみられます。本来食料である小麦やとうもろこしなどを燃料にするのは本末転倒のように思えます。
天笠さんは、バイオ燃料のほとんどは自動車に使われているのだから、自動車の総走行距離を減らすことを提案していました。公共交通機関を充実させる、24時間365日開いているコンビニへの配送のような流通革命をやめる、輸入食品を減らし、地産地消を増やす。など、具体的にエネルギー問題を解決する方法を述べておられました。
このような、経済を縮小する方向を今の日本政府がとるとは思えませんが、グローバル化ばかりがますます進むなかで、市場経済が環境を破壊するほど、肥大化した今の大量生産・大量流通・大量廃棄の仕組みは見直されなければならないと考えさせられた講演でした。