葛西臨海公園  オリンピック カヌー・スラローム施設建設予定地を訪ねて

 

赤点線部分が競技場予定地

12月8日(日)に、葛西臨海公園のオリンピックカヌー競技施設の予定地を「野鳥の会・東京」の飯田陳也さんに案内していただきました。1989年に葛西臨海公園ができたときから、よく子どもたちを連れて遊びに行ったり、荒川沿いの土手から臨海公園内を長距離走の練習のために走ったりしたので、私にとっては、とてもなじみ深い公園です。自然豊かなその公園の3分の1がオリンピックのカヌー・スラロームの会場に予定されているというので、野鳥の会は、環境への影響をきちんと評価すべきだと、開催場所の再検討を訴えています。

葛西沖は1950年代ころには、夏はアサリ、ハマグリ、冬は「葛西海苔」と海の二毛作で活気あふれる漁村でした。しかし、経済の高度成長期には、東京湾は埋め立てられ、工場群が誘致され、海岸線ははるか沖合まで退いていたのです。その葛西沖を、東京で人と海がふれあえる唯一の海岸として守りたいという地域の思いがあって生まれたのが葛西臨海公園です。

干潟が育む生態系が25年かけて、やっとできあがってきたところです。土壌・植生も豊かになり、森や草原、湿地帯など様々な環境があることで多様な生物が生息しています。昆虫140種、クモ80種、植物130種があるそうです。なかには現在23区では絶滅危惧種に指定されている生物も26種います。毎年、次から次へと5万羽ものスズガモの群れが訪れ、臨海公園で羽を休めていきます。また、人々がバーベキューを楽しむ広場には樹齢90年の榎があります。臨海公園のシンボルだそうです。これだけ大きくなると移植は難しいそうです。これらすべてに大きく影響するのが、スラローム競技場の建設です。

浜辺に流れ着くごみを拾う環境NPO、植生調査するボランティアの人たち、泳げる海にしようと活動している市民団体など、多くの市民の活動により、この公園は育てられてきました。人々が、豊かな自然との共生を求めて守ってきた公園です。今回のオリンピックは環境に配慮することを謳っています。いくら観客席は可動式で終了後は、スラロームのコースのみ残して、ラフティングが楽しめる施設にするといっても、1度壊れてしまった生態系は戻らないのです。オリンピックのために公園の西側をつぶして、12,000人もの観客が収容できる施設の建設は必要ないと考えます。