今、福島で起きていること 

小児科医 山田真先生の話をお聞きして

  
8月1日に区の主催で行なった区民向けの福士正広先生の放射能の学習会に参加した折、船堀駅前で配布されていたチラシに、8月18日の山田真先生の講演会の案内があったので、いろいろな立場の方からの放射線の話をお聞きしたいと思って参加しました。

山田真さんは、障がい児の父として「障害児を普通学校へ・全国連絡会」の世話人をされるなど、子どもたちを温かく見守る小児科医です。3月11日の東日本大震災以後は「子供たちを放射能から守る全国医療者のネットワーク」代表もしています。

今回の低線量被ばくのお話をご自身がずっと関わってこられた「森永ヒ素ミルク事件」(1955年)と関連付けてされました。「森永ヒ素ミルク事件」は、粉ミルクの中に製造過程で誤ってヒ素が混入したもので、赤ちゃんが微量のヒ素を飲み続けてしまったという事件です。当時で130人の赤ちゃんが死亡、12000人以上の被害者がいました。低線量被ばくと同様に、将来どうなるかが誰にもわからない状況でした。その後の経過観察によって、急性ではなく、晩発性のヒ素の影響は皮膚がんなどにわずかに現れる程度だというとことは50年後の今になってわかったことです。時間が経ってしまっているので、ヒ素の影響かどうかの因果関係が証明できず、救済の網の目から漏れた人たちがおおぜいいたと言うことでした。低容量の放射線の影響も同様に、何年も経たないとどうなるかは誰にもわからないということで、子どもたちの現状を把握し、しっかりと見ていかなければならないというお話でした。

今回の原発の事故を踏まえ、環境省が全福島県民を対象に健康調査に着手したことは、将来の子どもたちへの影響があったときの解明にも役立つものです。福島県立医科大安村教授は「現在の線量では、健康影響はないと思われるが、長期に及ぶ研究で評価し、不安解消に役立てたい。」と話しています。50年前とは異なり、未曾有の経験に、データの蓄積は欠かせないことです。

山田真さんは福島で2回、東京で1回、子どもの健康相談をしました。6月に福島に行ったときには多くの親子が相談に来たのですが、1ヵ月後の7月、福島の様子は変わっていて「福島は、国が安全といったから安全なんだ」という雰囲気のなか、子どもの健康が心配などということばを発すること自体がはばかられるような雰囲気になっていたのだそうです。健康相談に来るにも、周りの目を気にしながら、ということで相談に来る人の数も減ったということでした。子どもの健康について、話すのに気を遣わなければならないという福島の現場での話を聞いたのは初めてでした。

福島の子どもたちを、夏休みの間だけでも受け入れようと各自治体やNPOなどが支援したところもあります。このように、子どもたちを少しの間だけでも放射能汚染から遠ざけようと、活動している人たちがいる一方で、放射能の影響が怖いと言い出せない地域もあることを知りました。

放射能汚染に関して、東京では亀戸駅南口にある「ひまわり診療所」が相談にのっています。被災地からきた方々の相談も引き受けてくれているとのことです。