今後の公共事業の考え方について   6月議会での質問③     

最後の質問は、スーパー堤防に予算がついたことを考え、新規大型公共事業に対する区の考えを質すために、現在の公共構造物の維持管理費などがどのくらいかかっているのか、今後新規事業にどのくらいかかると見込んでいるかを質問しました。

質問

 今後の公共事業の考え方について伺います。国においては、防災・減災に資する国土強靭化方針が打ち出され、10年間で200兆円にも及ぶ巨額の財政投資によって、災害に強いまちづくりや景気回復が期待されています。しかし、その一方で、笹子トンネルでの天井崩落の事故をきっかけに、新しい公共事業を行うよりも、既存の社会資本をいかに長期間にわたって、安全かつ有効に使っていくかということの重要性が改めて認識されました。これまで、時代の変化や景気の善し悪しに関係なく行われてきた公共事業によって作りすぎた社会資本の老朽化が今後急速に進行し、その対策は待ったなしの重大課題として、今まさに優先される公共事業となっています。メンテナンスだけでも、年に8.1兆円の更新投資が50年にわたって必要だという試算もあります。新規事業も、メンテナンスも、というのでは、限りある財源のなかでは、今後共倒れになりかねません。

 国土強靭化政策によってすすめられようとする旧来型の新規公共事業より、既存の社会資本の徹底見直しによって国民の安全を確保していくことこそが最優先されるべきだと考えます。こうしたなか、江戸川区における今回の補正予算も、24億円のうち、スーパー堤防新規事業が約20億円を占め、一時凍結されていた大型公共事業が各地で復活しています。

 人口が減少に転じ、財政危機が一層深刻化していく中で、旧来型の建設優先型公共事業を続けていくとするならば、それは次世代に巨額のツケを残すことに他ならず、自然や生活環境の破壊が一層すすむことにもつながることから、大きな危惧を抱くものです。

そこで最初の質問です。①   江戸川区における、道路や橋など、既存のインフラのメンテナンスに、今後どのくらいの経費を見込んでいるのでしょうか?

②   また、今後行う予定の新規大型公共事業はどれほどあり、その経費をどのように見込んでいるのか伺います。

  インフラの老朽化は、住民の安心安全を脅かす重要な問題です。ではなぜ老朽化インフラが全国にこれほど大量発生したのか、その点にも目を向ける必要があります。

 公共事業を行うにあたっては、本来、住民生活に寄与し、それを持続可能にすることを目的に、その事業の必要性を住民参加で、充分に吟味したうえで、整備費用のみならず、維持・管理費用といった長期にわたるライフサイクルコストまでをしっかりと勘案する必要があったはずです。しかし実態は、「国の補助率や負担率」また「交付税措置」などが、その判断の要素となり、無駄と指摘される事業がなされる要因となったことは否めません。こうした現状は、構造的に地方自治体の自主的な判断をゆがめてしまうことにつながり、国においても自治体においても、公共事業における構造改革をすすめる必然性を生みました。

 インフラのメンテナンスを行うにあたっては、単に管理しているインフラ、あるものすべてを修理し続けるのではなく、人口減少等を背景に、必要なものを選択し、整理していく必要があります。

そこで伺います。③   区としてインフラの維持・更新にあたっては、その現状と課題を把握し、適正な判断ができるように、維持管理費や利用率、人口構造等の変化に伴う需要、今後見込まれる改修・改築経費等をまとめた「白書」を作成し、住民参加で将来を見据えた施設計画を策定すべきと考えますがいかがでしょうか。

 同様に施設においても「施設白書」および計画を策定すべきと考えますが、区の考えを伺います。

 

答弁:①   土木関連施設としては道路1000㎞、橋50+α、街灯3万6000基、駐輪場11、公園464などがある。経費削減に努めてはいるが、清掃・剪定・電気料金など年48億円。対処療法としてではなく予防保全の考え方で点検していくことで約30億円程度になると見込んでいる。

②   新規については計画しているもの。都市計画道路(第3次事業化計画)、区画整理(篠崎整備、北小岩、篠崎公園)など年60億円、用地・移転補償の費用が多くを占める。

③   江戸川区は開発においては比較的新しいので、施設更新のための大きな費用はまだ先の話。将来に備える必要はあるので、現状を調査して、公表していく。公会計システムになれば、資産管理が可能になるので、白書ということまでは考えていない。

 再質問

新規に大型公共事業を行うことは社会資本を増やすことであり、さらに維持・管理の費用を増額させることになる。本当に必要なのかどうか、総合的観点からの慎重な判断が必要。今回国のつけたスーパー堤防事業費42億円のうち12億円が北小岩に分配された。予算総額47億円だから、今後30億円以上がこの地に投入されることになる。スーパー堤防という国のメニューがあったから、それと合体させたまちづくりということになったが、区の言う課題を解決するのであれば、すでに買収した用地を活用することで、盛り土市内区画整理で充分解決できるが、あえて、盛り土をする必要性について再質問する。

 答弁:初めから盛り土をするということで進めてきた事業。住民のみなさんに納得していただけるように今後も進めていく。

 意見

東日本大震災でスーパー堤防の安全神話は崩れたわけで、スーパー堤防による盛り土の評価は大きく変わっている。スーパー堤防は高さが変わるわけではなく、洪水に対しては越水を容認する堤防であることからしても、防災・減災の観点から、避難場所にも津波対策にもなりえない。北小岩1丁目東部地区は区内でも地盤が強く高いところであり、区が考えるまちづくりに照らせば、通常の区画整理で充分であり、盛り土の必要はないと考えられる。

スーパー堤防事業のような国の制度は、新規建設事業ありき、で考えられた旧態依然のしくみであり、構造改革を行わなければ、本当に必要な公共事業が後手にまわりかねないということにもっと目を向ける必要がある。

 白書については、データとして現状を把握するために必要。施設はもちろんのことインフラの長寿命化計画を進めていくためにも作成すべき。